■ 猫(cat)

子猫の頸(くび)の付け根をくわえて携行し、ネコはその場所を噛まれるとおとなしくなる。 これとは別に飼い主や他のネコを突然噛むことがある。 これは手のような接触手段を持たない動物によく見られる習性であり、ふざけているに過ぎない。 しかしネコの歯はイヌより鋭くかなり痛く感じる。 また、驚いて反射的に手を引くと怪我をしてしまう。 しかしネコは、噛んでも相手が反撃しないのを確認して自分に対する愛情を確かめているのである。 「痛い」と口に出したり、軽く小突いて痛かったことを伝えると、徐々に甘噛みを覚えていく。 躾けようと思って叩いたり、必要以上に大声で叱責すると、自分に対する愛情を疑うようになり、 すねてしまったり、その日を境に寄って来なくなったりする。

イエネコは、形態学的分析を主とする伝統的な生物学的知見によって、 以前からリビアヤマネコ(Felis silvestris lybica)が原種とされてきた。 また、20世紀後半から発展した分子系統学等による新たな知見も、従来説を裏付ける形となった。 米英独等の国際チームによる2007年6月29日の『サイエンス』誌(電子版)への発表では、 世界のイエネコ計979匹をサンプルとしたミトコンドリアDNAの解析結果により、 イエネコの祖先は約13万1000年前(更新世末期〈アレレード期(英語版)〉) に中東の砂漠などに生息していたリビアヤマネコであることが判明した。

愛玩用家畜として同じく一般的なイヌ(Canis lupus familiaris)に比して、 ネコは飼育開始の時期が遅いが、これは家畜化の経緯の相違による。 イヌは狩猟採集民に猟犬や番犬として必要とされ、早くから人の社会に組み込まれたが、 ネコは、農耕の開始に伴い鼠害(ネズミの害)が深刻にならない限り有用性がなく、 むしろ狩猟者としては競合相手ですらあった。 その競合的捕食動物が人のパートナーとなり得たのは、 穀物という「一定期間の保管を要する食害を受けやすい財産」を人類が保有するようになり、 財産の番人としてのネコの役割が登場したことによる。

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